ピンポーン

「はい」
「藤野ですけど…」
「あ、ちょっと待っててくれ、今開けるよ」

インターホンが切れて、目の前の自動ドアが開く

そして、エレベーターで上がり、家の前でもう一度インターホンを鳴らす

ピンポーン

鳴らすとそのままドアを開けて出てきた

「おっす。ま、上がってくれ」
「おう」

部屋に通され、適当に座る

「しっかし、高そうな家だな」
「今時こんなもんだって」
「オートロックとかすごいよな」
「最近のマンションはどこでもつけられてるよ」
「へー」

話もはずみ、家にある最新ゲームなんかで遊んだり
あっという間に時が過ぎた

「じゃあ、俺そろそろ帰るわ」
「あ〜、もうこんな時間か」
「遅くまで悪かったな、また明日学校でな」
「おう、じゃあな」

玄関まで見送られ
来る時とは反対にエレベーターで下に降りる

そして、オートロックの自動ドアを通り、外に出る

「なんか、いいよな…」

別に、オートロックに憧れるわけではないが…
いや、ちょっとかっこいいとか思ったりもするが

距離が、いいのだ

来客が最初に訪ねられるのはマンションの玄関まで
実際に本人に会うためにはもう一度訪ね重ねる
なんとなく、外界と距離がある感じ
友人でさえ、まず距離を置ける感じ
もちろん、今の自分には叶わぬ夢なのだけど

もう一度、玄関を見
築10年の、自宅へと帰路につく